プレ講座第3回の概要

プレ講座第2回概要

家族の変化にあわせて団地も変わる!? 室崎千重(奈良女子大学)

室崎千重

◆人口の変化、家族の変化

多くの団地が、1960年代〜1970年代に建設されました。1960年と2010年の変化を見てみると、高齢化率7%→23%、平均世帯人員4.14人→2.62人、合計特殊出生率2.0→1.37となっています。少子高齢化が進み、世帯が小規模化しており、団地の建設時に想定された家族のかたちは、現状大きく変わっています。特に、建設当初からの居住者は、50年という時間が経ち、一人暮らしや夫婦のみの高齢者が大半となっている、という事実も見逃せません。建設から長期経過した団地の高齢化率は40%を超えるところも多く、日本全体が40年後に達する高齢化率です。今回は、高齢者の増加に焦点をあて、団地が対応するべきことを考えてみたいと思います。

高齢化率:65歳以上の高齢者の総人口に対する割合

合計特殊出生率:一人の女性が一生に産む子供の平均数

◆高齢者の生活の特徴

2000年に京都市都心部の旧小学校区の高齢者を対象に実施したアンケート調査から、既成市街地の高齢期の生活の特徴として、以下が捉えられました。
・高齢になるほど、日常的な行動範囲は小さくなり、家の近隣で生活する時間が長くなる
・外出中に何かあっても、誰かが助けてくれると思う安心感がある
・困った時に頼りにする人が、“近所の人”である人は、現在の家への居住継続意向が明確である

また、2006年に明石舞子団地(以下、明舞団地)で実施したアンケート調査からは、20代〜80代の各年代の比較から、以下が捉えられました。
・高齢になるにつれ、困った時に頼りにする人が「特にいない」の割合が増加する一方、「近所の人」という身近な存在が占める割合が増加する
・一人暮らし世帯は、困った時に頼りにする人が「特にいない」が多い一方で、「友人」「近所の人」が占める割合が増加する

◆ハード整備に必要な視点

長期経過した団地再生において、建替時には階段室型からエレベーターが設置され、住戸内もバリアフリー対応が行われます。しかし、高齢者の生活を丁寧に見てみると、バリアフリー整備のみでは不十分な点も見えてきます。
数年経過した建替団地の、再入居高齢者に対して行ったアンケート調査を紹介します。建替後団地のバリアフリーについては9割近い高齢者が評価しています。生活全体への評価については「楽しくなった」2割、「変わらない」7割弱の一方で、「寂しくなった」が1割以上存在していることが気になります。
そこで、近所づきあいの変化に着目して建替前後の変化を探ってみると、住棟内の顔見知りの数は増加しているにもかかわらず近所づきあいは減少していること、近所づきあいの減少と住棟まわりで偶然に出会う機会の減少が関係していることがわかりました。この偶然出会う機会の減少は、現在のハード整備とも大きく関連していました。団地計画においては、ハード面の計画に、住民が偶然出会う場や交流できる場のデザインも併せて実施する必要があると言えます。

◆高齢者の生活支援にも有効なソフトの仕組みづくりに向けて

日常生活において何らかの生活支援が必要な一人暮らし、夫婦のみの高齢者世帯も多く存在しています。このニーズには、介護保険などの公的支援のみでは到底対応することができません。そこで、住民同士の助け合いの仕組みがうまくできないか、この可能性を探るために行った、住民の意識としての助け合いの需要と供給の状況を紹介します。
20代〜80代の居住者に対して、「手伝ってほしいこと」「手伝えること」にそれぞれ該当するものを共通の22個の選択肢より選んでもらいました。地域内の需要と供給を比較した結果からは、「ゴミ捨て」「買物代行」などのように、助け合いのしくみの項目として成立する可能性が見えてきました。また、実際の利用についての意識から、本当に支援を必要としている高齢者が気兼ねなく利用できること、地域内のプライバシーの確保に十分配慮する必要があることがわかりました。
実際にうまく仕組みづくりができれば、生活に必要な支援があることに加えて、地域内での見守りや頼れる近所の人が新たにできることにより、安心して生活できる環境にもなると考えられます。
高齢化した団地では、住民や行政により様々な取り組みが行われています。先行事例も学びながら、自分たちの団地で必要な取り組みについて、考えていただけたらと思います。
(事例紹介略)

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