講座趣意書

講座趣意書

「今の住まいに暮らし続けるために――家族・コミュニティの再生」 開講趣意書

1.家族と住まいの現状と再生

暮らしや子育て・介護を支える一番の基礎である家族が大きく変わってきています。
家族においては夫婦のみや単身が増え、家族内の関係も希薄になり、これまで家族に期待されていた機能が働かず、家族の役割も大きく変わりつつあります。
私たちは、現在、4人に1人が高齢者という「超高齢化社会」を迎えています。高齢者のなかには身体機能が低下しあるいは認知症などを患う人および要介護高齢者も多数です。いろいろな理由により「引きこもり」になり、「孤独死」する人も後を絶ちません。過去は別にして家族からの援助だけでは生活を維持できない高齢者も増加の一途です。一方、子どもの数も減少続きで、子育てに悩む若い親も多く、居住地域での子育てや子どもたちへの支援も不可欠です。また、これらの問題に連動して、居住地域における人間関係やコミュニティも疎遠になる傾向も見られます。
以上のような変化にどのように対処するかは、私たち自身をはじめ、自治体や地域社会が抱える最大の問題のひとつです。しかし、山積するこれらの問題についてどのように再生すべきか格闘は続いていますが、まだどれをとっても充分な解決の道が見いだせていないのが実情です。

一方、私たちの暮らしや活動の場である住まいの実態はどうでしょうか。
大阪大都市圏でも、戦後公的機関や民間デベロッパーによりこれまでに開発・建設された住まいのストックは、経年劣化が進行し、保全するだけでなく再生の必要性が高まっています。ところが、これまでの住まいの再生は、そこに住み続けている人たちの暮らしを維持することが軽視され、経済的価値の観点からの建て替え中心で進んできました。
例えば、公的賃貸住宅では、まだ今後も長期にわたって使えるものでも、建設後30年で高層住宅に建て替えられ、残地が民間に売却され、高層マンションが建設されています。その結果、近隣関係が断ち切られ、高齢者などが住み続けたいと思っても、追い出されてしまうなどの問題も生じています。また、建て替え後に、子どもたちがのびのびと遊べるような居住空間を設けるなどの配慮も不充分です。建て替え後の賃貸住宅の家賃は高くなり、若年層が入居してもすぐに退居するといった状況もあります。
分譲マンションはどうでしょうか。
経年的に劣化したマンションのうち、交通至便で好立地にあるごく一部では、民間デベロッパーが主導して高層・高密な建物に建て替えられるという事例もあります。しかし、他方では、大多数のマンションでは、再生の必要性が高まっていても、行財政面の支援は薄く、居住者はどうしたらいいのか、考えあぐねているといった実態にあります。

以上のように、大阪大都市圏の家族とその暮らしは大きく変容し、それを受け入れる住まいの経年劣化もどんどん進行しています。その一方では、公的住宅政策は縮減・後退し、民営化・民間事業者依存・強化への流れが大きくなってきているのが現状です。

私たち居住者や市民が安全・安心に暮らし続けるために、住まいの再生をどのように進めたらいいのでしょうか?その解決のためにどのような方法があるのでしょうか?また、どのような展望を持って望んだらいいのでしょうか?同時に、家族とコミュニティの再生についても、どう考えていけばいいのでしょうか?
これらを皆で考え、解決策を模索していく必要に迫られているのだと思います。

2.講座のねらい

本講座では、上記のような住まい・暮らしそして家族・コミュニティの現状において、現在の住まいに暮らし続けるために、どのようなことが必要なのか、がメインテーマです。特に、大阪都市圏内の「NT(=ニュータウン)や団地」(*)を対象に、典型的事例を取り上げ、その再生を参加者みんなで一緒に考えていきます。

テーマとしましては、「NT・団地」におきまして、
①居住空間の実態と再生のあり方、
②地域のコミュニティの変化とその再生、
③家族の変容とライフスタイルの変化、
について講座参加者全員で議論し実践的に深めていく予定です。
また、それに際して、特に以下の3点を重視しながら進めます。
①高齢者や子どもなど居住弱者が、今のすまいに暮らし続けられること。
②再生は安全・安心を目的にし、建て替えでなくリニューアル中心で進めること。 ③再生においては、居住者・市民の事業への参画が不可欠であること。 さらに、本講座では、座学による学習だけではなく、現地での具体的・実践的な事例から学ぶことも重視します。そのために授業は現地での見学会や経験のある講師を招いて授業を行い、誰でもが学べ、かつわかりやすいことをモットーにします。

注(*)「NT・団地」とは ……大都市圏で主に公的機関(自治体・住宅供給公社など)によって企画、開発、計画、供給、管理されてきた賃貸や分譲の住まいを含むニュータウンと大規模団地。そこでの住まいのストック戸数は多くかつ経年劣化も進んでいますので、再生の課題も山積し深刻です。ただ、公的に建設されてきましただけに、今後の再生でも何らかの公的施策が不可避です。同時に、地域づくり、まちづくりの観点からも再生を捉えていかなければなりません。

3.講座の要綱

1)講座の予定期間 2014年4月から2015年12月 2)

講座の形式
・講義と討論
・現地見学(例:香里団地、武庫川団地、千里NT、泉北NT、明舞団地
・毎回2時間程度(現地見学は別)
3)予定講師
・研究者、専門家、市民、自治会・管理組合役員
4)受講者
・「NT・団地」居住者、市民
5)資料代
・1人・1回1000円
4.講座内容の公表 本講座は「大阪自由大学」の後援講座のひとつとして、2年間をめどに実施します。
またその内容を「報告書」もしくは「単行本」として出版して、より多くの市民にアピールすることをめざします。
2013年12月
「今のすまいに暮らし続けるために―家族・コミュニティの再生」講座実行委員会
代表 増永理彦(神戸松蔭女子学院大学教授)
秋田悟((株)アセットウェーブマネージャー)
阿部清比古(大阪自由大学応援団)
石沢春彦(編集者)
岡田篤司(一般社団法人高齢者地域居住支援センター代表)
趙玟姃(大阪府立工業高等専門学校総合工学システム学科講師)
室崎千重(奈良女子大学生活環境学部住環境学科講師)
山口岩次郎(健康麻雀楽雀会会長)

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